戸籍謄本は何セット集めればいいのか?
相続手続きをする際に欠かせないのが戸籍謄本です。相続がいつ発生したのか(=いつ亡くなったのか)、その人の相続人が誰なのか、を公的に証明してする戸籍謄本が、どんな手続きでも必要になります。
不動産の名義変更、銀行の預金解約など、戸籍謄本を提出する場面は多くあります。では、戸籍謄本はいったい何セット集めておけばいいのでしょうか。
目次
なぜ戸籍謄本が必要なのか
「相続人は私たち3人だけだ」と、相続人が主張しても、それが本当のことかは他人からは分かりませんし、家族でも知らない相続人が存在することもありえます。婚姻外でもうけた子を認知している可能性もありますし、亡くなった人が実は複数回結婚していたということもあります。養子縁組もありますね。
亡くなった人の戸籍謄本を、生まれたときから亡くなるまで取得して、隅々まで読み込んで初めて、誰が相続人なのかが判明、確定されることになるのです。
司法書士として、ご依頼者の戸籍謄本を拝見していると、ご家族でも知らなかった事実が発覚するということが、意外と多くあります。
相続手続きを受け付ける法務局や金融機関では、亡くなった人の相続人が誰であるのかを確認するために、必ず戸籍謄本等を要求してきます。
戸籍謄本はどこで、どうやって取得するのか
戸籍の種類
ここまで、「戸籍謄本」と書いてきましたが、厳密には下記のものがあります。
戸籍謄本:その世帯の構成メンバーの、氏名、出生年月日、死亡年月日、婚姻年月日などが記載されています。
除籍謄本:結婚して新しい世帯をもうけると、その人は、それまで親の戸籍に入っていたところから抜けます。これを「除籍」といいます。また、死亡したときも「除籍」されます。ちなみに、戸籍の筆頭者が死亡して除籍されても、その戸籍の筆頭者に変更はありません。亡くなった人が筆頭者のままです。
戸籍の構成メンバーの全員が除籍されると、その戸籍を請求すると除籍謄本と書かれます。
また、死亡したり婚姻といった事情がなくても、別の地へ本籍を移す(=転籍)と、転籍前の戸籍は、全体として除籍となります。
改正原戸籍謄本:法律の改正によって、戸籍簿の記載事項・方法に変更があると、それまでの戸籍簿は使わなくなり、新しく戸籍簿を編成することになります。改正原戸籍は、改正前のもの、という意味です。
ちなみに、「謄本」というのは、ある情報のすべてを出力したものです。家族の全部の情報を記載したものが戸籍「謄本」です。これに対して、「抄本」というのは、ある情報の一部だけを出力したものです。家族全部ではなく自分の部分だけを記載したものが、戸籍「抄本」です。
現代では、全部証明書とか一部証明書とかいうこともあります。いずれにしても、相続手続きにおいては、すべて「謄本」を用意すれば間違いありません。というより、すべての関係者を明らかにしないと、相続人の確定はできない、という考え方です。
謄本、抄本というのは、戸籍に限らず一般的な用語ですので、不動産の登記簿などでも、謄本、抄本、といいます。
何がどれだけ必要になるのか
たまに質問されるのが、「戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本は、それぞれ何通ずつ集めればよいですか?」というものです。この答えは、「取り寄せてみないと、誰にもわからない」です。
亡くなった人の死亡年月日を確認するために、その人の最後の戸籍を取り寄せたとしましょう。その戸籍の他の構成メンバーも亡くなっていたとすると、それは「除籍謄本」になります。しかし、ほかに健在な人がいれば、「戸籍謄本」です。
転籍を何回か繰り返していたら、除籍謄本がその分だけ必要になりますし、戸籍の改正があれば改正原戸籍も必要です。結婚を繰り返していたら、結婚のたびに作成される戸籍(または除籍)も必要になります。
結局、集めてみなければわからない、のです。
戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍謄本はどこで取得できるのか
本籍地の区役所、市役所、町村役場に請求し、取り寄せることになります。実際に役所に足を運んでもいいですが、時間に余裕があれば郵送で取り寄せるのが一般的です。請求書を送って、戸籍謄本等を受け取れるまで1週間~10日程度みておけばよいでしょう。ちなみに、役所の住所は、何丁目何番何号」と記載する必要はなく、郵便番号さえ正確に書けば、住所の記載は不要です。
手数料の支払い方法
「郵便定額小為替」というもので納付します。1000円、750円、500円、450円、など様々な券面額のものが1枚200円で販売されています。なかなか高額な手数料ですね。
戸籍謄本は1通450円、除籍謄本は1通750円、改正原戸籍謄本は1通750円です。
しかし、上記で記載したように、何が何通になるのかは、請求してみないと分かりません。したがって、郵便定額小為替は1000円のものを多めに入れておく、とよいでしょう。私はいつも、1000円ものを3枚送付しています。
お釣りがちゃんと返ってきますし、もし不足していればその旨の連絡をもらえますので、追加で送付すれば問題ありません。たまに、「お釣りのないようにお願いします」という案内があることがありますが、それは無理なのです。
もし、相続手続きが完了して、郵便定額小為替が余ってしまったら、郵便局の窓口で換金してもらえます。
たまに、お釣りが切手で返ってくることもあります。
請求書の書き方
「○○○○(=亡くなった人の氏名)について、相続手続きで使用するので、出生から死亡まで全て」と、申請書のどこでもいいので書いておけば、役所の人が万事心得てくれて、必要なものをすべて送ってくれます。繰り返しになりますが、戸籍謄本を何通、除籍謄本を何通、改正原戸籍謄本を何通、と指定することはできません。「各1通」と記載しておけばよいでしょう。
転籍や婚姻などで、一箇所の役所で揃わないこともあります。そのときには、他の役所へ、同じやり方で請求することを繰り返し、出生まで(あるいは10歳程度まで)さかのぼり、すべて集めます。
戸籍の束は何セット必要なのか
さて、いくつかの役所から取り寄せた戸籍謄本等の束が出来上がりました。これがあれば、不動産の名義変更登記や、銀行の解約などができます。ではこれは何セット必要なのでしょうか。手続きの分だけ必要になるかというとそうではありません。
法務局でも銀行でも、原本を提出しますが、必ずそれら原本を返してくれます。どうしても、すぐにすべての銀行の解約をいっぺんに行いたい、という理由があれば別ですが、そこまで急がないのであれば、戸籍の束は1セットあれば十分です。戸籍の束を1セット用意するのに、数千円の手数料がかかります。何セットも用意すると負担が大きくなりますから、1セットを使い回せばよいと思います。
法定相続情報は必要か
法定相続情報というのは、法務局に戸籍の束を提出すれば(手続き終了後、原本は戻してもらえます)、相続関係図に公的なハンコを押してもらえて、以後はそれでもって銀行などの相続手続きをすることができるようになるものです。
法務局において、不動産の名義変更をするのであれば、その登記と同時に法定相続情報を取得することができます。たしかに戸籍の束を使用することなく、証明書1枚で足りるのは便利です。しかし、誰が便利かというと、銀行などの、戸籍の束を受け取る側、です。
法定相続情報を作成、取得するのに、余分な手間や費用がかかりそうなのであれば、とくに必要はないと思います。
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