【登記原因証明情報のひな形掲載】農地の売買について


司法書士は日頃、登記簿とにらめっこしながら仕事をしていますが、そこに農地の記載をみると、一瞬「むむっ」となります。これは気をつけなくては、となるわけです。
農地の登記については、都道府県知事または農業委員会の許可(または届出)が必要となることがあるからです。そのため、登記簿上の農地の記載を見逃すと大変なことになるわけです。
ただし、相続によって所有権を移転する場合は、許可(または届出)は必要ではありません。しかしその後、第三者に売却する際には、許可(または届出)が必要となってきます。
目次
農地とは
農地とは耕作の目的に供される土地をいう、とされています(農地法第2条)。登記簿の表題部の記載としては、田や畑、となっています。
どんな場合に許可・届出が必要なのか
農地の所有権を移転する場合に、許可(または届出)の要否が問題となります。以下、個別に記載します。
- 相続ーーー不要
- 遺贈ーーー不要
- 相続人以外の者に対する相続分の譲渡ーーー必要
- 死因贈与ーーー必要
- 共有農地の共有物分割ーーー必要
- 売買ーーー必要
「必要」の場合において、その旨の登記をするには、農地法所定の許可書(または届出書)の添付が必要となります。
と、いいますか、許可(または届出)が得られなければそもそも売買契約などの効力が生じないのです。
農地法3条、4条、5条の違い
農地法を検討するときに必ず出てくるのが、3条、4条、5条です。
3条
農地をそのままで所有権移転する場合。許可権者は農業委員会です。
4条
農地を、農地以外のものにする場合(自己転用)。許可権者は都道府県知事、ただし市街化区域内にある農地については農業委員会への届出。
5条
農地を、農地以外のものにするために所有権移転する場合。許可権者は都道府県知事、ただし市街化区域内にある農地については農業委員会への届出。
市街化区域・市街化調整区域とは
市街化区域とはすでに市街地となっているエリアで、市街化調整区域とは市街化を抑制し自然環境を守るとされているエリアです。
売買契約における効力発生日~代金支払日との関係
農地の売買契約後に農地法の許可(または届出)が得られたときには、その時点で売買契約の効力が生じます。登記における登記原因の日付は、許可書到達の日となります。
ただし、売買契約に、農地法の許可が得られた後において、売買代金の完済があったときに所有権が移転する旨の特約があるときは、その定めに従います。
登記原因証明情報の記載例
登記の原因となる事実又は法律行為
(1)売買契約
令和○年○月○日、売主Aと買主Bは、農地法第5条第1項第7号の規定による農業委員会への届出が効力を生じること及び(2)の特約を付して本件不動産につき売買契約を締結した。
※農地法の一部改正により、令和2年4月1日から、農地法第5条第1項第6号は、第7号になっています。
(2)所有権移転時期の特約
(1)の売買契約には、本件不動産の所有権は、農地法第5条第1項第7号の農業委員会への届出の効力が生じた後において、売買代金全額の支払いが完了した時にBに移転する旨の所有権移転時期に関する特約が付されている。
(3)届出書の到達
令和○年○月○日、農地法第5条第1項第7号の規定による届出書は農業委員会に到達した。
(4)代金の支払
Bは、Aに対し、令和○年○月○日、売買代金全額を支払い、Aは、これを受領した。
(4)所有権の移転
よって、本件不動産の所有権は、同日、AからBに移転した。
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