【実際のご相談事例】親が「あなたの名義にしておきたい」と言っているけど、本当に今やるべきなの?
司法書士の手塚宏樹です。不動産の名義を変える、というのは一つの象徴的な出来事なのだと思います。老齢の親御さんから、「私がしっかりしているうちに、家のこともちゃんと考えないとね」ということで、「名義を変えておこう」というお話が出てくることもあるでしょう。
しかし、不動産の名義を変えるのは、何らかの理由がなければならず、単に「名前を変える」という手続きは存在しないのです。
目次
売買なのか贈与なのか
不動産の名義を変える場合に多いのが、「売りました買いました」ということで買主名義にするか、お金は払わずに「あげましたもらいました」ということにするか、です。
前者は売買契約を、後者は贈与契約を締結したということになります。
売買をするのであれば、当然、対価の支払いが必要になります。贈与であれば、それは不要ですが、贈与税が高額になる可能性もあります。
注意しなければならないのは、不動産登記の名義を変えることと、税金の手続きは別個のものなので、税金のことを何も考えずに名義変更の登記をしてしまい、後から税金のことを知って青ざめる、ということです。
売買にしても、贈与税ではないですが、別の税金が問題になりますので、事前にしっかりと税金面は検討しておかなければなりません。
生きているうちに「相続」ということはない
「相続」というのは、ある人が亡くなったときに起こるものです。
民法でも、下記のように規定されています。
第882条
相続は、死亡によって開始する。
一般的にはあまり正確に使われていない言葉のようで、ご相談に来られる方が「相続で名義を変えたい」とおっしゃるから、どなたかが亡くなったのかと思いきや、まだぜんぜんお元気、ということがわりとあります。
いま所有者を変更する以外の選択肢は?
将来、不動産を相続する権利を持つ人たちの間で、紛争が予想されるから今のうちに名義を変更しておきたい、というお考えであれば、何らかの手を打っておく必要があります。
遺言によって相続すべき人を指定しておくとか、所有者の方が亡くなったときに効力が発生する特別な贈与契約をするとか、信託という方法を検討することもできるでしょう。
しかし、必ずしも、今すぐ名義を変えておかなければならないケースだけでもありません。何もしない、でよい場合もあります。
推定相続人は誰なのか
推定相続人というのは、ある人が亡くなったときに、相続人になるであろう人です。
親が亡くなったとすると、その配偶者と子が現在の推定相続人です。
子が一人ならば名義はそのままでも良い
もし、子が複数おらず一人だけならば、不動産は、将来いずれその子のものになりますから、特段、現時点でコストをかけてまで名義変更をしなくても良いのではないでしょうか。
もちろん、その他のもろもろの事情を考慮して、それでもやる、ということもあるでしょう。しかし、特別な事情がないのであれば、子が一人であれば、「知り合いは相続のときに手続きが大変みたいだったから、いまのうちに名義を変えておいたほうがいいのではないか」ということは、考えなくてよいです。
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