自筆証書遺言の法務局保管制度について
司法書士の手塚宏樹です。2020年7月より、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになります。原本が公証役場に保存される公正証書遺言と違って、原本が自分の手元に1通しか存在しない自筆証書遺言の活躍の場が広がりそうです。
目次
いつから利用できるのか
令和2年7月10日からです。
どこの法務局に行けばいいのか
・遺言者の住所地
・遺言者の本籍地
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
とされています。しかし、すべての法務局というわけではなく、関東圏では下記のみです。
東京法務局 | 本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局 |
水戸地方法務局 | 本局、日立支局、土浦支局、龍ケ崎支局、下妻支局、常陸太田支局、鹿嶋支局 |
宇都宮地方法務局 | 本局、足利支局、栃木支局、日光支局、真岡支局、大田原支局 |
前橋地方法務局 | 本局、高崎支局、桐生支局、伊勢崎支局、太田支局、沼田支局、富岡支局、中之条支局 |
さいたま地方法務局 | 本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、東松山支局、越谷支局、久喜支局 |
千葉地方法務局 | 本局、市川支局、船橋支局、館山支局、木更津支局、松戸支局、香取支局、佐倉支局、 柏支局、匝瑳支局、茂原支局 |
横浜地方法務局 | 本局、川崎支局、横須賀支局、湘南支局、西湘二宮支局、相模原支局、厚木支局 |
申請はどのようにするのか
遺言者本人が上記の法務局を訪れる必要があります。代理人による申請は認められていないので、必ず本人が動かなければなりません。窓口で本人確認をされます。
ご本人が法務局まで行くことができない場合は、公証役場から出張してもらえる公正証書遺言の作成を検討すべきでしょう。
遺言書の様式
封をしてはいけません。遺言書を書いた用紙を封筒に入れ、無封の状態で提出します。その場で内容を確認するためですね。
また、遺言はA4の用紙に記載することとされており、ホチキス止めはしてはなりません。このあたり、通常の自筆証書遺言とは異なりますので注意が必要です。
手数料
保管の手数料は1件あたり3,900円です。
法務局でスキャンされて原本と画像が保存される
窓口に、申請書とともに遺言書の原本を提出すると、様式に不備がないかのチェックがされ、問題なければ保管してもらえます。
スキャンした画像データを、関係者がのちのち閲覧することも可能となります。
内容についてはチェックされない
ここは重要なところですが、法務局で保管してもらえるからといって内容にお墨付きを得られるわけではありません。ここは通常の自筆証書遺言と同じです。保管を求める時点において、形式的な不備がないかの確認をしてもらうにすぎません。
したがって、この制度を利用する場合は、司法書士等の専門家のアドバイスが不可欠といえるでしょう。内容がシンプルな場合はご本人だけで手続きができることもあるかと思います。
検認不要
法務局に保管してもらわない自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったあとに家庭裁判所に持ち込んで「検認」という手続きを経なければ実際の相続手続きで使用することはできません。これは、遺言書の形式が法的に不備がないかを確認するものです。
本制度を利用して遺言者がお元気なうちに法務局に預ける場合は、その時点において形式面でのチェックを行いますので、検認手続きが不要とされています。
家庭裁判所での検認手続きにはそれなりの日数と手間がかかりますので、この点は大きなメリットと言えます。
閲覧できる人
遺言者本人は、いつでも閲覧請求ができます。しかしコピーは手元に置いておくべきでしょうね。閲覧請求するのにも本人が出頭しなければなりませんから。
相続人や受遺者、遺言執行者は、遺言者が亡くなったあとに閲覧請求ができることになります。「遺言書情報証明書」という書類を発行してもらえます。1通1400円とのことです。ここには、遺言書の画像データや、遺言者の氏名住所、作成年月日などの情報が記載されます。
通知制度
相続人、受遺者、遺言執行者以外の人物から閲覧請求がなされた場合には、この3者に対して通知されることになっています。
保管の撤回
遺言者本人は、いつでも、法務局に対して保管してもらっている遺言書を返してほしいと申し出ることができます。
遺言者の住所、氏名、本籍の変更
遺言者の情報に変更があった場合にはすみやかに法務局に対して申し出をしなければなりません。受遺者の情報について変更があった場合も同様です。
利用する価値のある制度なのか?
まだ現時点では本制度を利用することはできませんが、概要を調べる限り、十分利用価値はあると考えます。これまで、私が遺言のご依頼をいただいた場合には、お客様の予算の問題がなければ公正証書遺言一択でした。しかし、自筆証書遺言の保管制度を利用すれば費用も大きく抑えられます。検認手続きがないというのも魅力です。我々のような専門家が積極的に関与すべき制度と考えます。
関連記事
無料相談フォームはこちら
メールは24時間以内にご返信します