【実際のご相談事例】未成年の子どもがいるときの相続手続き
目次
【ご相談事例】
夫が亡くなりました。相続人は妻である私と、10歳の長男です。
夫名義の持ち家と預貯金がありますが、どのように手続きをしたらよいのでしょうか?
司法書士の手塚宏樹です。若くして亡くなった方がいる場合、そのご家族もまだお若いということがあります。
とくに、お子さんが未成年の場合は、相続の手続きが煩雑になることがあります。
法定相続分で登記をする
登記の申請は管轄の法務局で
亡くなった方が不動産をお持ちの場合、その名義変更の登記をする必要があります。これは、市役所や税務署の手続きではなく、法務局で行うものです。
法務局は日本全国にあり、名義変更の登記を申請するのは、その不動産が所在する地区の法務局です。
管轄の法務局でのみ受け付けてくれます。
どのような持分で登記をするか
ご主人が亡くなってしまい、のこされたのが奥様と未成年のお子様の場合で考えてみます。
民法で定められた相続分(法定相続分)は、奥様が2分の1、残りの2分の1がお子様です。お子様が複数名いるときは、2分の1を分け合います。
法定相続分のとおりに名義変更の登記をするのであれば、実はそれほど大変ではありません。
なぜなら、法定相続分どおりの名義変更登記には、遺産分割協議書が不要とされているからです。
法定相続分とは異なる割合で相続する
法定相続分とは違った持分で登記をする、たとえば、奥様が不動産の100%を所有することとする、というのもありうることだと思います。
不動産の共有は避けたほうがよい、ということをどこかで目にされたことがあるかもしれませんが、親子の共有はそこまで忌避すべきものではないと考えます。成年の兄弟姉妹が共有するとなると、トラブルのもとになる可能性はありますが。
しかし、持ち家を、近い将来に売却する可能性があるのであれば、奥様の単独所有にしておくということにメリットがあります。売買契約を締結し、実際に買主に名義を移す場合には、未成年者が所有者として名前が入っているとなかなか面倒な手続きになってしまいますので。
売却したり、賃貸したりする可能性があるのであれば、未成年者の名前は入れないほうがよいと思います。
そうすると、これは「法定相続分とは異なる持分で登記をする」ということになりますので、「遺産分割協議書」が必要になります。
未成年者は遺産分割協議に参加できない
未成年者が遺産分割協議に参加して署名押印することはできません。
たとえ、その人が印鑑証明書の交付を受けられたとしても、です。未成年者は単独では法律行為をすることができないからです。
ではどうすればよいかというと、特別代理人という人を、家庭裁判所で選任してもらう必要があります。
遺言があれば特別代理人は不要
亡くなった方が遺言を準備していて、その中で「すべての財産は妻に相続させる」と書いてあれば、特別代理人の選任や遺産分割協議書などは不要とできます。
特別代理人とは
特別代理人というのは、未成年者に変わって遺産分割協議に参加し、署名押印をする人です。
親族にお願いすることが多いかと思います。
相続人のなかに未成年者がいて、法定相続分とは異なる割合で登記をする場合には必ず必要になります。
家庭裁判所に遺産分割協議書の案を提出する
家庭裁判所で特別代理人を選任してもらうにあたっては、遺産分割協議書の案を提出します。
裁判所では、未成年者の不利益にならないかどうかを検討し、問題がないようであれば特別代理人を選任してくれます。
どのような内容であれば良いのかはケースバイケースのようです。
未成年者の不利益にならないかがポイント
問題ないのは、遺産総額全体に対して、未成年者が取得する相続分が、法定相続分と同じかそれに近い場合でしょう。
たとえば、亡くなった方の遺した不動産の価値が1000万円、それとは別に預貯金が1000万円あるとします。
奥様が不動産を取得し、お子様が預貯金をすべて相続するのであれば、それぞれが1000万円ずつを取得することになりますから、遺産総額全体の2分の1を未成年者が取得します。これは特段問題ないでしょう。
しかし、奥様が不動産を取得し、預貯金もすべて奥様が取得するとなると、これはなかなか認められないかもしれません。未成年者の不利益にならないか、がポイントですので。
今まで私自身が関与したケースでは、預貯金の一部を未成年者が取得する内容で通ったことはあります。遺産総額全体からすると、2分の1には満たない金額でしたが。しかし、別の裁判所では同じ内容でも、そのままでは通すことができないと指摘されたこともあります。
代償金の支払い
奥様からお子様に代償金を支払う、ということで通ったこともあります。
不動産の価値が2000万円、預貯金が1000万円、という場合だと、不動産を妻の単独所有とすると、預貯金をすべて子に相続させても、遺産総額全体で考えると子の取り分が少ないということになってしまいます。
子は法定相続分で考えると1500万円の権利がありますので、妻から子に、足りない分の500万円を代償金として支払う、ということを遺産分割協議書に明記することで、特別代理人が選任されたこともあります。
ケースバイケース
ご相続は、ご家庭ごとに異なるものです。特別代理人の選任については、家庭裁判所に事情をよく説明し、書記官の方ともコミュニケーションをとって進めていく必要があるでしょう。
手塚司法書士事務所では、家庭裁判所への特別代理人選任の申立てから、遺産分割協議書の作成、名義変更の登記まで一貫してお引き受けいたします。
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