遺言で相続できるとされた財産を放棄することはできるのか?
司法書士の手塚宏樹です。親が遺言をのこしてくれていても、それが自分たちの意に沿うものとは限りません。遺言を読んで、のこされた家族が困ってしまうような場合、どうしたらいいのでしょうか。
目次
遺言は絶対なのか?
我々専門家が相続のご依頼を受けた場合、手続きを進めるにあたっては、まず、遺言の有無を確認します。遺言があればそれに従って手続きを行うのです。
遺言がなければ、相続人全員で遺産分割協議をして、「遺産分割協議書」を作成してそれを使って相続の手続きをしてくことになります。
遺産分割協議がととのわなければ、家庭裁判所での調停ということになることもあるでしょう。
いずれにせよ、遺言があればそれが優先します。
たとえば銀行の窓口で
銀行の預金を解約しようとするときに、遺言があればそれを提出してください、なければ遺産分割協議書を提出してください、と言われます。
銀行としては遺言があるかどうかは知りようがありません。公証役場に問い合わせをすれば、公正証書遺言の有無は調べることができますが、そこまではしないようです。それに自筆証書遺言であれば、その存在は絶対にわかりません。
法務局の相続登記の場面でも、遺言があればそれを提出しますが、ない場合は遺産分割協議書を提出します。法務局でも遺言の有無はわかりません、というか調べません。
遺言とは違うように遺産を分けたい
父がのこしてくれた遺言には、長女である自分が多くもらえるように書いてあったが、妹が同居して親の世話をしていたので、妹に多くもらってほしい。自分は放棄できるか?
というようなこともあるでしょう。そうしたときには、相続人全員で遺産分割協議をすれば良いです。協議のなかで、妹に多く相続してもらうようにすれば、それで銀行の手続きも法務局の手続きも何も問題ありません。
ただ、相続人全員が納得しないと遺産分割協議書は作成できませんので、そこは注意しなければなりません。
家庭裁判所の相続放棄はできるのか?
では、上記の例とは異なり、家庭裁判所に対して相続放棄の申立てをすることはできるのでしょうか?
家庭裁判所への相続放棄の申立てが認められると、「自分は相続人ではない」ということになります。相続人ではないので遺産分割協議にも参加しません。
遺言によって財産をもらえるとされた人が相続放棄できるかというと、できます。その人が相続放棄してしまうと、遺言のなかの該当する条項は無意味となりますので、その財産については遺産分割協議をすることになります。
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