相続登記をしても、以前に取得していた持分についての住所氏名変更は自動的には行われない。
司法書士の手塚宏樹です。ひとくちに相続登記と言ってもいろいろなパターンがあります。亡くなったAさんから、その子であるBさんに100%の権利が動くこともあれば、もともとAさんとBさんの共有になっていたところ、AさんがなくなってBさんが相続するとか。前者も後者も司法書士としてはよく見かける案件です。
目次
相続登記にはいろいろなパターンがあります
冒頭に書きましたように、相続登記にはたくさんのパターンがあります。
- 親から子への100%の権利が移転する
- 親から子どもたちへ権利が移転して、子どもたちの共有になる
- 親が亡くなって配偶者と子の共有になる
- もともと父と母の共有名義であったところ、父が亡くなったので父の持分を子が相続し、母と子の共有になる
- もともと父と子の共有名義であったところ、父が亡くなったので父の持分を子が相続し、子の単独所有となる
このほかにも、あげていけばキリがないほど、いろいろなケースが考えられます。登記をする原因にも、遺産分割によって登記を行うのか、それとも遺言によって登記を行うのか、それとも法定相続分どおりに登記を行うのか、とさらに場合分けできます。
登記手続きにおいて人を特定するのは住所と氏名
さて、相続登記に限られる話ではありませんが、登記手続きにおいて、人(所有者とか債権者とか)を特定するのは「住所」と「氏名」です。住所と氏名が同一であれば、登記上は同一人物として扱うということです。登記簿には住所と氏名しか記載されませんから、生年月日などは登記簿上からは分からないわけです。
不動産を「取得するとき」に住民票を提出しますので、登記簿に記載されている住所氏名は、その不動産を取得した時点におけるものであることは間違いありません。しかし、その後、引っ越しをしたり、結婚あるいは離婚をして姓が変わったとしても、市役所などから法務局に通知がされるなどということはありません。
ちなみに、誰かが亡くなったときに、市役所から銀行に通知が行くということもありませんので、口座が勝手に凍結される、なんということもありません。
住所や姓が変わったときには、変更登記を行って、現在の住所氏名に合わせておく必要があります。厳密には、すぐに変更登記を行わなくても罰則などもないので、問題ないといえばないのですが、たとえば、その不動産を売却するとなったときには必ず変更登記をしなければなりません。売却するときには、所有者は印鑑証明書を提出しますが、印鑑証明書の住所氏名と登記簿上の住所氏名が一致していなければ同一人物とは扱われないからです。
以前に権利を取得したときの住所氏名は相続登記とは連動しない
もともとAさん(東京都在住)とBさん(北海道在住)が不動産を共有していたとします。Aさんが亡くなったので、その持分をBさんが相続することになりました。Bさんはそのときには福岡に住んでいました。Bさんは相続登記を行い、無事にAさんの持分を自分に移転することができました。
しかし、登記簿をよく見ると、もともとAさんとBさんで共有で取得したときの住所は、Bさんについては北海道のままになっています。これは、登記官としては、「たぶんこのBという人は、同一人物だろう」と考えたとしても、申請された内容を超えて勝手に登記をすることはできない(しない)ので、「北海道のBさん」と「福岡のBさん」の二人が不動産を共有しているかのように、登記簿では表現されてしまいます。
住所変更、氏名変更は別途申請しなければならない
司法書士が関与すれば、お客様に「ちょっと費用が増えてしまいますが、住所変更もやっておきましょう」とご案内するかと思いますが、ご自分で相続登記をやろうとすると、こういったところは見落としてしまうポイントでしょう。
このケースでは相続登記と合わせて、住所変更または氏名変更の登記を別途申請しなければならないということになります。
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