【まとめ】相続登記について
目次
相続登記(不動産の名義変更)とは?
ある人が亡くなると、その時点で亡くなった人(=被相続人)が保有する財産は全て相続人に承継されます。タンス預金の現金であれば、相続人で現物を分けてしまってそれで手続きは終了しますが、不動産の場合はそう簡単にはいきません。相続人が『私が相続した』と言っても、第三者からすると、本当に相続したのかどうかが分かりません。そこで、対外的に相続したことを明確に示すのが「相続登記(名義変更)」です。
相続登記とは不動産の所有者名義を変更する手続きのことです。家や土地などの不動産の権利関係は、法務局が管轄する登記簿に記載する形で管理されています。この登記簿に所有者として記載されている被相続人の名前を相続人に変更することが相続登記です。
不動産の登記手続きでは虚偽の登記を阻止するため、原則として登記権利者と登記義務者が共同で行います。登記権利者とは、売買契約でいえば買主であり、登記義務者は売主です。相続の場合は、この原則が適用されず、登記権利者・義務者の関係はなく、相続人が登記をすることができます。
相続登記は法務局で申請手続きします。ただ、どこの法務局でも良いわけではなく、不動産が所在する地域を管轄する法務局で行います。なお、必ず法務局に出向く必要はありません。申請方法には法務局で行う書面申請の他に、電子申請(オンライン申請)と言って、自宅のパソコンからも申請ができます。
相続登記の必要書類とは?
相続登記に必要な書類は大きく分けて、登記の内容を記載した「申請書」と、申請書の内容を証明する「添付書類」になります。
1)申請書
①登記申請書
まず、必要なのが登記申請書です。登記の目的や原因、相続人、相続不動産などを記載します。
②登記事項証明書(登記簿謄本)
申請書を作成するために必要になるのが、法務局にある登記事項証明書です。
※実際に、申請書とともに提出する必要はありません。
2)添付書類
①被相続人の住民票の除票
不動産の所有者である被相続人の「住民票の除票」が必要です。住民票の除票では、引越しや死亡などによって住民登録の抹消されたことが証明できます。ちなみに、「登記簿上の住所」と「住民票の住所」が異なる場合は、住所の履歴の分かる「戸籍の(除)附票」を用意します。
②被相続人の戸籍謄本一式
法定相続人が誰であるかを証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式が必要です。戸籍謄本の取得は本籍地の市区町村へ請求します。本籍地が複数ある場合は、それぞれの市区町村から集めます。
③相続人全員の現在の戸籍謄本
相続人の生存を証明するため、相続人全員の現在の戸籍謄本を提出します(被相続人の死亡日以降に取得したもの)。なお、遺言書による相続登記の場合は、相続を受ける人の戸籍謄本のみで構いません。
④遺言書
遺言書による相続登記の場合は遺言書も提出します。
⑤遺産分割協議書
遺産分割協議を行って相続登記をする場合は、正規の手続きで作成された遺産分割協議書が必要です(様式は自由ですが、法務局で受理されるように過不足なく記載する必要があります)。
⑥相続人全員の印鑑証明書
遺産分割協議書に記載されている相続人全員の印鑑証明書を添付します。3ヶ月以内、などの期間の制限はありません。
⑦不動産を取得する相続人の住民票
登記簿には相続人の住所・氏名が記載されるため、それを証明するために住民票を添付します。
⑧固定資産評価証明書
登記申請には登録免許税という税金がかかります。登録免許税の税額の確認のために提出します。
相続登記の申請義務化が決定!どういうこと?
近年、所有者不明の不動産の増加が防災や環境保護の面で社会問題に発展しています。増加の背景には「相続登記の申請」や「住所等の変更登記の申請」が義務付けられておらず、また無申請でも当事者には何の不利益を被らないことがある、などが挙げられます。
そこで、不動産登記法等の改正によって、「相続登記の申請の義務化」や「住所等の変更登記の申請の義務化」が決められました。
1)相続登記の申請が義務化
相続等によって不動産の所有権を取得した相続人は、「相続が開始されたことを知り」、且つ「不動産の所有権の取得を知った日」から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。仮に、正当な理由なく相続登記の申請を怠ると、10万円以下の過料を科されます。この義務化は令和6年4月1日から実施されます。
2)相続人申告登記の新設
相続登記の申請の義務化に伴い、申請を容易に行えるように「相続人申告登記」という制度が新設されます。相続人申告登記とは、相続人が義務期間内に以下の2つを申告することで、相続登記の申請義務を果たしたとみなされる制度のことです。
・所有権の登記名義人の相続が開始されたこと
・自らがその相続人であること
例えば、「相続する不動産の持分が相続人の間でもめている」、「遺産分割協議で相続割合がなかなか決まらない」などの事情がある場合は、とりあえず相続人申告登記だけを済ませておくことが有効です。
相続登記にかかる費用の目安
名義変更を行う際にかかる主な費用としては、登録免許税と添付書類の取得費用があります。
1)登録免許税
名義変更には登録免許税が課されます。税金は法務局へ申請する際に納付するのが一般的です。登録免許税は全ての不動産に対して一律の金額が課されるわけではなく、不動産の固定資産税評価額に準じて税額が決められます。
固定資産税評価額に一定の税率をかけて税額が算出されますが、相続による名義変更の場合の税率は0.4%です。不動産評価額が1000万円だと、登録免許税は4万円となります。
2)添付書類の取得費用
主な添付書類1通の価格は以下の通りです。
・住民票:300円
・固定資産評価証明書:300円
・登記簿謄本(登記事項証明書):600円
・印鑑証明書:300円
・戸籍の附票:300円
必要な書類の数は相続登記の内容や理由によって異なります。また、市区町村によって費用の異なる場合があるため、郵送によって請求する場合は、郵便定額小為替を多めに同封しておくなどの工夫が必要です。
3)業務委託費用
相続登記は必要な書類が多く、また相続人が複数いる場合は申請作業が煩雑になります。そのため、司法書士へ申請手続きを代行してもらうケースが多いでしょう。なお、司法書士以外には弁護士しか登記手続きを行うことはできません。
司法書士へ相続登記を依頼した場合は、司法書士への報酬が発生します。報酬の金額は一律になっているわけではなく、司法書士によって異なります。相続登記の内容によって金額が変わりますが、一般的に8~15万円が相場かと思われます(登録免許税などの実費は別途)。
相続登記を自分でやった場合の手順
相続登記をする場合は、基本的に以下の3つの流れで進めます。
1)添付書類の収集
2)不動産の分配
3)相続登記の申請書の作成
1)添付書類の収集
相続登記の申請ではまず始めに、管轄の市区町村にて必要な添付書類を全て収集します。相続人が複数いる場合は各相続人にも協力してもらいます。
遠方の役所から取得する場合は、郵送でのやり取りが便利です。
2)不動産の分配
不動産を「誰が」、「どのくらい」相続するのかを決めます。遺言書があれば遺言書の内容通りに分けます。遺言書が無ければ当然、相続人全員の話合いで決めます。不動産の分配が決まったら、必ずその内容を「遺産分割協議書」に記載します。
3)相続登記の申請書の作成
申請書のひな型と記載方法は法務局のホームページに掲載されているので、不動産の登記事項証明書を確認しながら作成していきます。申請書の種類はいくつかありますが、相続人同士の話合いで分配した場合は「所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)」を使用します。
ちなみに、電子申請(オンライン申請)を利用すると法務局に行く必要が無くなります。申請用ソフトをインストールし、説明書通りに記載することで相続登記ができます。
が、一般の方で、ご自分で申請する場合は、オンライン申請ではなく、旧来の紙申請をすることが無難でしょう。
相続登記に期限は無いが放置するとどうなる?
現在は、相続不動産の相続登記に対する法的な期限は設けられていません。つまり、相続登記そのものが義務ではないということです。不動産の所有者が亡くなり、相続人に承継されたとしても、被相続人から相続人へ相続登記をしないことがあります。相続登記を行わなかったとしても、法務局や行政機関から連絡や通知が来ることはなく、罰則を受けることもありません。そのため、この世にいない人が不動産の所有権者ということが少なくありません。
相続登記をしなくても法的な罰則は受けませんが、放置していると以下のようなデメリットが生じます。
1)不動産の売却が不可
2)相続での問題の発生
1)不動産の売却が不可
不動産の売買は当然、不動産の所有者と購入希望者の間で行われます。相続登記をしていないということは、相続人が所有者として登記されていないことになりますので、不動産を売却することは不可能です。また、当該不動産を借入の担保にしたりすることもできません。
2)相続での問題の発生
相続登記をしない間に不動産を管理している相続人が亡くなるということがあり得ます。ところが、長年相続登記をしていないと必要書類の入手が困難になることがあります。そのため、次の相続人への相続登記に長い時間がかかるようになり、また作業が煩雑になります。
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