行方が知れない相続人がいるのだけど、どのように連絡を取ったらいいの?
東京・小平市の司法書士 手塚宏樹です。相続案件を中心に、平成17年より事務所を運営しております。今回の記事では、相続人のなかに、行方が知れない、または連絡先がわからない、という人がいる場合にどうしたらいいのかということをお話ししていきます。私の事務所にご相談に来られる方のうち、数ヶ月に一回くらいの割合でこのようなお話を伺います。
目次
相続人になるのは誰か
ある人が亡くなった場合、相続人になるのは、配偶者と子どもです。子どもがいなければ、亡くなった方の親になります。親がすでに亡くなっていれば祖父母、祖父母もすでに亡くなっていれば、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人となります。なお、配偶者はつねに相続人となります。
たとえば、自分の父親が亡くなって、その相続人が自分の母親と、自分と、自分の弟であると。こういうケースならば、連絡がつかないということはあまりないのではないかと思います。もちろん、絶対にないとは言えませんが。
しかし、次のようなケースならばどうでしょうか?自分の叔父さんが亡くなった。叔父さんには子どもがいない。したがって相続人は叔父さんの兄弟姉妹となる。叔父さんの兄にあたる自分の父はすでに亡くなっているので、自分が相続人になる。そのほか、本来ならば相続人となるはずの叔母さんもすでに亡くなっているので、その子(つまり自分にとっては従兄弟)も相続人になる。
こういうケースだと、従兄弟の連絡先を知らないという方はいるかもしれませんね。それでもほかの親族の方に聞いてみれば、なんとか連絡はつけられるかもしれません。
しかし、本当に、だれも相続人の行方、現住所、連絡先を知らないというケースもあります。亡くなった方と、前の配偶者の方との間のお子さんがいらっしゃるときは、そもそも交流がないということもあるでしょう。話を聞きたい方に聞くことももはや叶いません。
相続が起こったとき、まず何をすべきか?
相続人同士で話し合いをして、どの財産を誰が相続するのかを決める必要があります。したがって、関係者に連絡をとって、話し合いの場をもうけるか、または電話等でもいいので話をまとめなければなりません。ここで、あまり関係の深くない人同士が相続人になっていると、直接話をするのが難しいということもあるでしょう。また、関係が近いからといって必ずしも直接話せるとも限りません。
最終的に何をしなくてはいけないのか?
財産の引き継ぎ先を決めて、各所の手続きをしていきます。各所というのは、法務局や金融機関です。法務局では亡くなった方の名義のままだった不動産の名義を変更し、金融機関では口座の解約をしていきます。
そのためには、戸籍謄本を集めて、法律上だれが相続人であるのかを明らかにしなければなりません。これはご自身でやるのが難しければ司法書士に頼むことができますし、不動産の登記を依頼するつもりならば、最初の戸籍集めの段階から頼んでしまうのが良いです。
相続人の確定ができたら、遺産分割協議書を作成します。不動産は誰それが引き継ぐ、預金は誰が引き継ぐ、という内容を書いていきます。後日の紛争を防ぐためでもありますし、法務局や金融機関に提出するためでもあります。なお、これも司法書士に頼むことができます。
遺産分割協議書の文面が完成したら、相続人全員が署名し、実印で押印し、印鑑証明書を用意します。なお、この印鑑証明書の期限の問題についてはこちらの記事をご参照ください。
連絡がとれない相続人がいる場合、どうしたらいいのか?
このように、相続が起こったときは、最終的には遺産分割協議書に署名・押印、印鑑証明書の用意、が必要になるわけなので、誰か一人でも連絡がとれない人がいると、たちまち手続きは頓挫してしまうことになります。ですので、なんとしてでも連絡をとらなければなりません。
まずは住所を調べます
住民登録がされている現住所を調べます。これは、司法書士ならば、職権で調べることができます。この段階までに集めた戸籍謄本などを手がかりに、現住所を調べることはそれほど難しくはありません。
手紙を送ります
現住所がわかったら、手紙を送ってみます。相続が起こったこと、手続きを進めようと思っているが協力していただけないかということ、などを記載します。
このときに絶対にやってはいけない(と私が考えていることは)、いきなり遺産分割協議書を同封して、「これに署名押印して、印鑑証明書とともに送り返してください」とやってしまうことです。逆の立場、つまり受け取った側の方からのご相談も何回か受けたことがあります。「このようなものが送られてきたのだが、署名していいのだろうか?」という。突然そのようなものが送られてきたらビックリしますよね。失礼だとも思います。
ですので、私のご依頼者がお手紙を送る立場の場合、必ず、「最初の手紙では結論は急がないでください」とお伝えしています。と、いいますか、私のほうで文案を作成することが多いです。いろいろご説明しても、やはりどう書いていいものかよくわからないと思います。そして、司法書士の名前でお送りするのではなく、ご依頼者のお名前でお手紙を出してもらうようにしています。
反応があれば、丁寧にお話します
先方からご依頼者のほうに連絡があれば、その先は私のほうが手続きのご説明を引き継ぎます。あるいは、最初のお手紙に「この司法書士に頼んでいるので、ここに直接連絡してください」と書いてあるので、私のほうにお電話がくることもあります。
この先は、ご依頼者の意向をお伝えして、その内容でご納得いただけるようであれば遺産分割協議書に署名・押印をお願いするという流れになります。もし、ご納得いただけない場合は、当事者同士で解決していただくか、弁護士さんに入っていただくことも視野に入れなければなりません。
反応がなければどうするか
手紙を送っても無反応の場合は困ってしまいます。以前、そのようなことがあったときには、友人が経営している調査会社(興信所)に調査を依頼しました。引っ越しをしたけれども住民登録の異動届を出していなかったようでしたが、無事にお住まいの住所を知ることができました。
連絡がとれない相続人がいる場合とても神経を使うけれども
司法書士としては、当然、すべての相続人にコンタクトがとれる状況が望ましいわけですが、連絡がとれない方がいると、それはそれで燃えてくるものです。以前このようなことがありました。お父様が亡くなって、相続人はその子どもである自分、そしてお父様と前妻との間のお子様(つまり自分とは兄弟姉妹の関係)という状況。私のところに来ていただいて、上記の流れで現住所を調べ、お手紙を出したところ、すぐにお返事をいただきました。相続の手続きが終わったら、とくに会いたくはない、という方もいらっしゃいますが、この方はぜひ会いたいと。自分の兄弟姉妹だからと。一緒にお墓参りにいき、その後も交流が続いているというお話を伺って、とても心が暖かくなった記憶があります。定型的と思われている司法書士の仕事にもこのようなことはままあります。
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